
2025年の金価格は、年初は昨年からの上昇基調が継続し、4月には一時1トロイオンスあたり3,500ドルまで上昇し、その後は3,200~3,400台のレンジで推移しました。日本円でも同様に上昇し1gあたり16,000円を超える日もあり、一時16,190円台まで上昇する場面も見られました。金は主要資産の中でも上位のパフォーマンスを記録しましたが、道中は様々な要因で価格が上下動しておりましたので、1月~7月までの動きを月ごとに振り返ってみたいと思います。
1.金価格の推移と要因(2025年1月〜7月)
■月ごとの価格推移
– 1月:昨年からの中央銀行による金購入が継続し、米国のインフレ懸念と中東情勢の緊張により安全資産としての金需要が高まり、ドル建て価格は2,620ドルから2,790ドル台に上昇し、円建て価格は13,100円台から13,960円台まで上昇した。
– 2月:トランプ大統領が中国、カナダ、メキシコからの輸入品に最大25%の関税を課すと発表し、貴金属輸入にも影響があるのではとの懸念が強まり、ドル建て価格は一時2,950ドル台、円建て価格は14,490円台まで上昇したが、懸念が徐々に落ち着いてきたことに伴い、13,800円台に下落して終了した。
– 3月:米連邦準備制度(FRB)の利上げ停止観測が強まったことから米金利が低下し、ドル売り→ゴールド買いが強まり、ドル建て価格は2,850ドル台から3,120ドル台へと初の3,000ドルを突破し、円建て価格は13,840円台から15,060円台まで上昇し初の15,000円台を付けた月となった。
– 4月:4月2日にトランプ大統領が相互関税政策について発表し、市場の不安感が増大したことから金融市場全般が下落し、それに伴ってドル建て金価格も一時的3,000ドルを下回り、円建て価格も13,900円台に急落した。その後は相互関税政策の実施延期が発表されると金融市場は持ち直したことから金価格も回復し、円建て価格は一時15,700円台まで上昇した。
– 5月:トランプ大統領による相互関税政策に関するニュースで市場は方向感が定まらず、ドル建て価格は3,200ドル~3,400ドルのレンジ、円建て価格は14,600円台~15,600円台のレンジでの動きとなった。
– 6月:イスラエル-イラン間の緊張の高まりに伴うゴールド買いによって上昇する場面もあったが、米国の介入によって地政学的リスク緩和すると下落し、ドル建て価格は3,240ドル~3,450ドルのレンジで推移した。また円建て価格はドル建て価格の上昇に円安が重なり、一時16,000円台まで上昇する場面もあった。
– 7月:8月1日の米国の追加関税の実施延長期限まであと1カ月となり、関連するニュースで上下したものの方向感はなく、ドル建て価格は6月と同様3,240ドル~3,450ドルのレンジで推移し、円建て価格は円安の影響により一時16,190円台まで上昇して史上最高値を更新した。
金価格(円建て)

金価格(ドル建て)

■全体総括
全体を振り返ってみると、地政学的リスクの存在、中央銀行の継続的な買い、ETF市場への資金流入が加速したことが価格の下支えとなり、その中で米国の関税政策に関するニュースによって価格が大きく上下動しました。
今後の注目ポイントは以下になります。
・米国の追加関税政策の世界経済への影響
・米国の金融政策(利下げはいつ行われるのか?)
・地政学的リスク(イスラエル関連、ロシアーウクライナ関連、または新たな火種がでてくるか?)
2.プラチナ価格と銀価格の推移
2025年1月~7月の金価格の動きのまとめは以上となりますが、プラチナ価格、銀価格も大きく上昇しました。
■プラチナ価格
プラチナ価格は6月半ばまでは4,000円~5,000円のレンジで推移していましたが、6月後半から大きく上昇し、7月半ばには1gあたり7,000円超えとなりました。金価格の上昇に伴い、ゴールドの需要大国である中国およびインドで、宝飾品および投資用需要がゴールドからプラチナに切り替わったことがきっかけでメインの市場であるロンドン・チューリッヒ市場でプラチナ現物が枯渇したことが上昇のきっかけとなりました。また中国は貴金属の輸出が禁止されており、一旦中国に持ち込まれたプラチナは国外に出ることがないため、市場での品薄感が継続したことも価格上昇を後押ししました。
プラチナ価格(円建て)

■銀価格
銀価格は、金価格の上昇の影響を受けて昨年から徐々に上昇していましたが、金価格に対する割安感が続いていたことに加え、トランプ大統領による関税政策が上昇に拍車をかけることとなりました。銅に対して50%の関税が課せられるとのニュースが出たことをきっかけに、米国内で工業品を生産するにあたり銅価格が上昇しましたが、シルバーは宝飾品だけではなく工業用材料としての需要もあることから、銅価格の上昇をきっかけに銀価格も上昇し、7月には1gあたり180円を超えることとなりました。
銀価格(円建て)

まとめ
- 2025年の金価格は、年初は昨年からの上昇基調が継続した
- プラチナ価格は、6月後半から大きく上昇し、7月半ばには1gあたり7000円超えとなった
- 銀価格は金価格に対する割安感が続いていたことに加え、トランプ大統領による関税政策が上昇に拍車をかけることとなった