大切な現物資産を安全に保管するためには、さまざまな選択肢があります。どの方法が自分に合っているのかを知るために、代表的な保管方法の特徴や長所・短所を見比べてみましょう。
1.保管方法の種類と概要
まずは、現物資産の保管に利用される主な方法について、その概要をかんたんに把握しておきましょう。
金は資産価値が高い一方で、保管という観点では盗難や災害などのリスクが常につきまといます。そのため、安全性や利便性を考慮したうえで、どの手段が最適かを見極めることが大切です。特に、保管のためのコストやアクセスのしやすさ、さらに万が一の補償面など、複数の要素を検討する必要があります。
近年では、専門業者や銀行が提供するサービスの種類も増えました。手数料やセキュリティ基準、利用時間の制限などは各保管方法で異なるため、選択する前に細かい規約や費用体系を確認しておくと安心です。

地金保管サービス
地金保管サービスは、地金商などが提供しているサービスで購入したまま預け入れることが可能です。保管方法は特定保管と、消費寄託の2種類があり、特定保管は、所有権が預けた本人に帰属し、預けた物品がそのままの形で保管され、原則として預けた本人に返還される形式です。一方、消費寄託は、所有権が運営会社に帰属し、預けた物品が消費・使用されることを前提としており、同種・同量の物品が返還される仕組みです。長所としては、専門施設のセキュリティと保険がしっかりしている場合が多いという点が挙げられます。災害や盗難のリスクを最小限に抑えられ、預けた金の量や資産価値がどのような形で管理されているかをデータで確認できるケースもあります。
一方の短所は、保管手数料と手続き面での制約です。契約内容によっては物理的に現物を取りに行く際の手間や時間がかかることがあり、自由度は低くなりがちです。緊急時に現物をすぐ取り出したい場合には、一旦手続きを経てからの受け取りとなるため、リアルタイムでアクセスするのはむずかしいかもしれません。手数料も比較的高めに設定される場合があるため、頻繁に現物を動かす必要がなく、長期的に安定して保管したい人向けの選択肢となります。
特定保管の場合には保管料がかかる場合が多く、長期的なコストも頭に入れておく必要があります。消費寄託の場合には、保管料が手ごろな場合が多く、コスト面での負担を抑えられるという利点があります。
貸金庫
貸金庫は銀行などの金融機関が提供しているサービスで、耐火性や防犯性に優れた専用の保管スペースを利用できます。
長所は、金融機関が管理する強固なセキュリティにあります。アクセスが限られるため、第三者に勝手に触れられるリスクがほとんどありません。守秘性が高く、紛失や盗難のリスクを極力減らせる点も大きな魅力です。
高度なセキュリティが維持されているため、安心感の高い選択肢といえます。料金は通常、年間契約または月間契約で設定され、6ヶ月で10,000円程度かかるため、金融機関の比較検討が必要となります。
一方の短所は、貸金庫にアクセスできるのは金融機関の営業日・営業時間に限定される場合がほとんどです。いつでも自由に出し入れができるわけではないため、急いで金を取り出したいシーンでは難点となりますし、仕事や生活の都合で平日に足を運ぶのが難しい人にとっては、不便を感じるという意見もあります。さらに、利用料は長期間利用になるほど積み重なるため、コスト面も検討しておきましょう。
自宅保管
自宅保管は、ご自宅でご自身のセキュリティ対策のもと保管することになります。
自宅保管の最大の長所は、いつでも自由に金にアクセスできることにあります。投資目的だけでなく、金貨やアクセサリーなどを実際に手元で楽しみながら保管したい人にとっては最適な手段といえます。また手数料がかからない場合が多いため、コストを抑えたい人にも人気があります。
また、専用の金庫を導入すれば、防犯や耐火性をある程度確保できます。家族や自分しかその場所を知らないという安心感も得られます。 一方の短所は、災害や泥棒などのリスクを考慮し、しっかりと対策を整えないと危険が伴う場合があるということです。保険を適用する場合は、高額の品だと、契約時に保険会社へ申告が必要となります。高額な金庫を導入しても、万が一に備えた保険が十分でなければ、損害が補償されない可能性があります。また、補償限度額によっては、損害の全額が補償対象とならない場合もあるため、十分な注意が必要です。
このように、保険、高性能の金庫、防犯カメラなどを導入すれば多少は安心できますが、導入や維持のコストにも目を配る必要があります。
2.選び方のポイント
自身のライフスタイルや資産の運用方針を踏まえて、保管方法を選ぶときにチェックすべきポイントを整理します。
金の保管方法を比較検討する際は、単に安全性の高さだけでなく、利用目的や緊急時の対応など複合的な視点で判断することが重要です。特に、資産をどの程度アクティブに動かしたいかによって、優先順位は大きく変わります。
また、保管に要するコストと、万一のトラブル時でも被害を極力回避できるような補償体制のバランスを考える必要があります。ここでは主な観点をいくつかピックアップして解説します。

セキュリティ vs アクセス性
高いセキュリティを重視するならば、専門性の高い業者による地金保管サービスや貸金庫の利用が有力候補になります。特に金融機関の貸金庫は、人的防犯や監視カメラなど多重のセキュリティ体制が整っていることが多いので、盗難リスクは非常に低いといえます。
一方で、普段から金を手軽に引き出せる利便性を求めるなら、自宅保管も視野に入ってきます。セキュリティ面をどこまで強化するかによって、費用や準備に違いが出るので、自分の運用スタイルに合ったバランスを見つけましょう。
コスト vs 安心感
保管料や手数料がかかる方法は、どうしても支出が増えるために敬遠されがちですが、セキュリティや保険内容が充実している場合は大きな安心につながります。特に高額な金を大量に保有しているなら、多少費用をかけても厳重に守るメリットは大きいでしょう。
一方で、ある程度のリスクを受け入れることで費用を抑えたい場合には、自宅保管など手数料のかからない選択肢もあります。ただし、万が一トラブルが発生した際に、どの程度の被害を補償できるかを事前にシミュレーションしておくことが重要です。
保険の有無や補償内容の確認
保管方法を選ぶ際には、保険がついているかどうか、補償範囲がどの程度なのかを必ず確認しましょう。地金保管サービスや貸金庫は、災害や盗難に対して一定の補償が適用される場合が多く、手間や費用を見合った以上の安心を得られる可能性があります。運営会社によって補償適用は異なりますので、事前に確認しておきましょう。
自宅保管の場合、火災保険や盗難保険の特約を追加するなど、利用者自身で補償体制を強化する必要があります。資産価値の高さに応じて、保険のオプションを適切に検討し、万が一の時にも迅速に対応できるようにしておきましょう。
※1 金・プラチナ・銀は日々価格が変動しますので、市場売却受託サービスをご利用の際に購入価格を下回る場合もあります。
※2 本記事は、元本が下回らないことを保証するものではありません。
※3 本コラムの記載は、一般的な情報提供を目的としており、特定の投資結果を断定的に保証するものではありません。投資には市場変動等によるリスクが存在します。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任と判断に基づいて行ってください。
まとめ
- 金は盗難や災害リスクが高いため、セキュリティ・アクセス性・コスト・補償など複数の要素を比較して、自分に合う保管方法を選ぶことが重要
- 地金保管サービスは、専門施設が厳重に保管し補償も充実、ただし手数料高めで即時引き出し不可。貸金庫は、銀行の高いセキュリティで安全だが、利用時間が営業時間内に限られる。自宅保管は、いつでもアクセスでき手数料不要だが、防犯・保険など自分で対策が必要
- セキュリティとアクセス性・コスト・保険内容のバランスを重視し、資産の運用スタイルや緊急時対応も含めて総合的に判断することが求められる